51xiXcw+68L
 クロード・モネは嫌いではない。画才は紛れもないし、その類まれな才能をお金に変換する才覚も、抜きん出ていた。後のファン・ゴッホが貧困のうちに没したのとは対照的だ。モネの『印象、日の出』は、《印象派》という表現運動の由来となっているように、その中心人物として、もの凄い数の作品を残した。代表作の『睡蓮』だけでも300点以上を描いたとされている。
 物語の舞台は、モネが1926年に亡くなるまで40年以上を過ごしたパリ郊外の村・ジヴェルニー。今では“印象派の聖地”として、そこに世界中から観光客が押し寄せるのだと言う。モネの家は美術館となり、モネの庭には睡蓮が浮かぶモネの池がある。そんなモネ一色の美しい村の小川のほとりで殺人事件が起こる。被害者は眼科医ジェローム・モルヴァル。絵画コレクターで、なかでもモネの『睡蓮』に執着し、絵画の裏市場にも手を伸ばしていたらしい。また妻帯者ながら、複数の女性と関係を持ち、隠し子がいるという疑いも浮上していた。
 実はこの小説には、「ある村に、三人の女がいた。」で始まる意味深なプロローグがある。一人目は意地悪で、二人目は嘘つき、三人目はエゴイスト。一人目は80歳を超えた老婆、二人目は36歳の人妻、三人目はもうすぐ11歳になるという。三人目の少女は、絵画に豊かな才能を持つファネット。二人目は村の美しい小学校教師ステファニー・デュパン。そして、一人目の老婆が、この物語の語り手である「わたし」だ。
 事件を捜査する美術好きの刑事ローランス・セレナックは、美しい二人目の女・ステファニーに注目する。というのも、彼女は被害者ジェローム・モルヴァルの愛人の一人と噂になっていたからだ。物語の背景はこれくらいにしておこう。ただ、読み終われば、読者が思い描いていた事件の“絵解き”が粉砕され、驚くべき“だまし絵”が浮かび上がってくることだけは、断言してもいいのではないか(^O^)私もすっかり“やられた!”のだが、むしろ愉快な気分でもあった(笑)
2
 ところで、モネの睡蓮の池は、日本でも人気のようだ。高知にはクロード・モネ財団が世界で唯一公認したモネの庭『北川村「モネの庭」マルモッタン』というのがあるのだと言うし、SNSには“モネの庭とそっくり”という各地の蓮池がアップされている。日本人はつくづく印象派が好きなのだなぁと思う(^^♪